「力士の香り」で癒やし効果 グッズ続々

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引用元:時事通信
「力士の香り」で癒やし効果 グッズ続々

◇びん付け油をイメージ
 大相撲人気が続く中、力士のまげを結う油に近い香りを付けた商品が増え、人気を呼んでいる。リップクリーム、ボディーソープに香水など、癒やし効果や相撲情緒を求める女性相撲ファンらに好評で、実物の油も一般客に売れているという。

 大相撲初場所が行われている東京・両国国技館。両国駅を降りると、太鼓や力士が歩く雪駄(せった)の音が聞こえ、甘くて香ばしいにおいも漂ってきて、相撲情緒をかき立てる。力士が通った後に残る、まげの油のにおいだ。

 国技館の一角に設けられた日本相撲協会公式グッズ販売コーナーでは、バッグやタオル、最近ではミニ国技館を組み立てるナノブロックなどが人気だが、中でもリップクリームが次々と売れていく。「台紙に『鬢(びん)付け油の香り』と書いてあるのがウリ」と担当者は言う。

 2017年から相撲協会が実践女子大と提携して開発している新商品の第5弾で、相撲協会から20、30代女性向けの商品をとの要望を受けて企画した。

 香りはバニラビーンズで出したという。和服を思わせるような淡いピンクを基調に、土俵や軍配をあしらったデザインも特徴だ。

 リップクリームの季節も意識して昨年九州場所で発売したところ、用意した2000個が場所途中で完売した。初場所も初日に325個が売れたのをはじめ、好調な売れ行きが続いている。1本500円。

 国技館近くの「國技堂」では、昨年夏場所前からボディーソープを売り出した。「土俵サブレ」「あんこあられ」などが人気の老舗甘味処だが、大学と専門学校で教壇にも立つおかみの岩佐殊巳さんが、においと心理的効果について研究したところ、びん付け油のにおいで落ち着くと感じる生徒が多かったことから思いついたという。

 「びん付け油自体のにおいは、一般の人にはちょっときつくて好き嫌いがあるから」と親交のあるせっけん・洗剤メーカーに依頼して、ボディーソープを作った。浴室内に香りが広がり、湯上がりにも肌にほんのり残る。

 発売以来1000本近く売れており、「肌もツルツルになると評判で、女性客とリピーターが多い。プレゼント用なのか、お相撲さんも買っていきます」と岩佐さん。ラベルのイラストも自作した。300ミリリットル入りでポンプ付きが1738円、詰め替え用が1628円。

◇本格派? は香水や「実物」で
 香水の製造・販売などを手掛けるルズ(東京都品川区)が17年に発売したのがその名も「力士」。同社の「和」をテーマにしたブランド「J-Scent(ジェイセント)」の一つで、広報担当者によると、開発者が下町を歩いていた時、前に力士がいて、甘く懐かしいにおいが漂ってきたことが製作のきっかけだった。

 目指したのは「びん付け油のにおいをベースに、力士の凛としたたたずまい、力強さ、品格、たくましい背中などのイメージとともに、懐かしい温かみのある香り」。びん付け油は高粘度のワックスなのに対し、香水は揮発性の高い液体なので、「トップ、ミドル、ラストという香水らしい香り立ちと残香を持たせながら、びん付け油を思わせる香りにする」ことに苦心したという。

 「力士」と聞いて「汗臭いのでは?」などの戸惑いを含めて多くの反響があり、今では人気商品として定着した。購買層は20、30代が中心で、男女比は同じくらい。蔦屋書店や江戸東京博物館の売店などで取り扱っている。50ミリリットル入り、3850円。

 今年2月1日には、缶入りの練り香水「力士」「あんみつ」「恋雨」の3種を限定発売する。練り香水には柔らかく香りが広がっていく特徴があるという。3種セットで3960円。

 これらの商品は、くちびるや体に触れることを考えた成分で香りをつくっているが、国技館内にあるベースボールマガジン社の売店や両国の相撲土産物店では、油の実物が売られている。

 一般的には「びん付け油」とされているが、厳密には、力士のまげを結うのは「すき油」。大相撲ではもっぱら東京都江戸川区の島田商店が製造・販売する「オーミすき油」を使う。成分は木蝋(もくろう)、菜種油、ひまし油だが、においはバニラなどを独自にブレンドした香料で付けている。つまり実物もにおいの元は香料。

 力士が長い髪を毎日洗ってまげを結い直すとなると、床山の手間がかかり、シャンプーや油を大量に使う。このため数日に一度しか洗髪しないが、相撲で汗をかいても、油の強くて甘いにおいと混じって力士独特のにおいになる。島田商店によると、1960~70年ごろ、相撲部屋の要望を聞きながら試行錯誤して現在の香料ができた。

 せっけんほどの大きさで、国技館内の売店では1300円。1場所に200個近く売れるという。室内に置いて芳香剤にする人が多いそうだが、少量を髪の毛先や襟足に付けて楽しむ人もいる。

 ところで、力士の間近にいる家族らはどう感じているのだろう。公式グッズ売り場に立つ元幕内里山の佐ノ山親方は「枕や襟に油が付いて大変なんです」と明かす。

 現役を引退して昨年9月に断髪式を終えた。一般人の髪型になって油を使わなくなり、家族は助かっているという。「相撲女子」たちが香りを楽しむのとは、ちょっと違う事情がありそうだ。(価格はいずれも税込み、2020年1月現在)(時事ドットコム編集部)

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