あとどれだけ自分を磨けばいいのだろう?ーMatt『予想もつかないStory』|渋谷で君を待つ間に

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引用元:幻冬舎plus
あとどれだけ自分を磨けばいいのだろう?ーMatt『予想もつかないStory』|渋谷で君を待つ間に

カワムラユキ

誰かを待つ時間、あなたはどんな風に過ごすでしょうか。
その人が来たときの第一声を考えたり、そのあとの時間に思いを馳せたり、あるいはメールチェック、SNS、携帯ゲームなど、過ごし方はさまざま。
この連載では、そんな「待つ時間」にそっと寄り添う音楽を、DJ、作詞、音楽演出など幅広い活動をしているカワムラユキさんに毎回紹介していただきます。*   *   *

 

鳴り止まない通知音、いつも誰かと繋がっている

必然ばかりを追い求めて、偶然を遠ざけて 

 

君はゴミ箱にゴミを放り込む

富ヶ谷公園ではブランコが風に揺れている

山手通りに漂う冬の匂い、排気ガスと騒音と落ち葉と

 

ブランコに腰掛けて「東京ラブストーリー」のことを思い出す

昼過ぎに食べた薬膳カレーが恋しい

クミン、クローブ、ローリエ、ターメリックが混じり合う黄色いライス

このままスリランカに行ってしまいたいなんて、錆びた金属音の隙間、交互に連想は押し寄せる

 

そんな妄想にさらわれていても、新しい通知音が我に返す

この時間にはスパイスが足りない、決定的な日常には煩悩が物足りない

 

あとどれだけ自分を磨けばいいのだろう?

創造すること、初恋の始まりと終わり

そして人生の仕上げ方、美の行き着く先とは

 

死に方ばかりを気にして、生命力を顔に描けない

明日の今日は今日と同じで、今日という明日は昨日とは似て非なるもの

 

いっそ脳を空っぽにしてしまえば?

純白の肌、雪解けを待つ大地、張り詰めた空気

薄暗い闇夜に浮かび上がる一条の光

 

不意に予想も出来ない運命の訪れに

心の支度は何時も間に合わない

 

小説のような偶然と必然が折り重なる未知のストーリー

実はずっと待っているのに

 

昨日の僕、今日の僕は、何ひとつ予想を心に描かなかった

きっと明日もこのまま、この世界に身を委ねて笑顔と涙に翻弄されて生きてゆく

物語のような毎日と共に

 

 

Matt『予想もつかないStory』2019年(Matt)

■カワムラユキ
1978年8月東京生まれ、幼少期を仙台で過ごす。 98年頃よりフリーランスのプロデューサーとして、ヨーロッパのダンス・ミュージックのプロモート、様々な企業とのコラボレーションワーク、イベント制作を担当。 2000年頃よりDJ、ライターとしての活動をスタート。 DJ活動の傍らでスペインのIBIZA島などヨーロッパ各国を周遊しながら、ダンス・ミュージックに限らず、リラックスに特化した「Chill Out(チルアウト)」空間での音楽演出など、独自の活動を探求する。 2008年からは作詞家として「NARUTO」「バクマン。」「鷹の爪」などのアニメ主題歌、NHK WORLD「domobics」(東京パフォーマンスドール+どーもくん)、水曜日のカンパネラとのコラボ作品「金曜日の花魁」、多くのアーティストにカバーされたSam Smithのグラミー賞受賞曲「Stay With Me~そばにいてほしい」などの日本語詞を担当。 2010年には渋谷道玄坂にて、ウォームアップ・バー「しぶや花魁 shibuya OIRAN」をオープン。店舗運営と連動して、自身が主宰するミュージック・ブランド「OIRAN MUSIC」を2014年に発足。コンピレーションCDのリリース、リミックス・ワークの配信、アートや音楽フェスとのコラボなど、「渋谷」をキーワードとしたコンテンツ提供を活発に行っている。 現在、渋谷区のコミュニティFM「渋谷のラジオ」第一月曜16時~、インターネット・ラジオ「block.fm」毎週金曜20時~に、レギュラー番組の選曲とナビゲーターを担当中。 Twitter: @yukikawamura821 Instagram: @yukikawamura821 Web: OIRAN MUSIC公式サイト

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