カワムラユキ
誰かを待つ時間、あなたはどんな風に過ごすでしょうか。
その人が来たときの第一声を考えたり、そのあとの時間に思いを馳せたり、あるいはメールチェック、SNS、携帯ゲームなど、過ごし方はさまざま。
この連載では、そんな「待つ時間」にそっと寄り添う音楽を、DJ、作詞、音楽演出など幅広い活動をしているカワムラユキさんに毎回紹介していただきます。* * *
あれから一年の歳月が流れて
時は何も待たず
人生というものは「JOKER」だった
そんな風に思うのは、少し感傷的になりすぎているのかもしれない
ブルーになる支度は出来ていなかった
日中の気温は14度、真夜中は1度
聞き覚えのない名前がついた満月と、誰もいない裏通り
目的がある時にしか歩かなくなった僕は、太陽の光を避けるように最短距離で目的地へと
暗闇に浮かぶ松濤美術館を通りすぎて
囚われた天使が許しを乞うイメージで、歩幅は小さく微かに
もう手遅れだった君は、残された時間に気づいているのか
それぞれの美学を尊重することを選んで、夢みたいな話題や褒めることばかりを
もう歩くのさえも難しいのに、肉を喰らい赤いワインを飲む
黒いビールとイカ墨のリゾット、スウィーツには興味を示さずに
数週間後に君は消えた
あれから一年、ありとあらゆる迷いと希望が目前を過ぎるたびに
触れたことのない優しさや、見たことのない夜明けも知った
僕の人生も例え「JOKER」だとしても、君の側で眠れるのならば、きっと悪くはない
そんな風に思えるのは、君という「JOKER」を失ったせいなのかな
きっと君は無邪気に笑うのだろうね
ブルーはもういいよ、考えすぎだよって
加藤和彦『JOKER』1987年(東芝EMI)
■カワムラユキ
1978年8月東京生まれ、幼少期を仙台で過ごす。 98年頃よりフリーランスのプロデューサーとして、ヨーロッパのダンス・ミュージックのプロモート、様々な企業とのコラボレーションワーク、イベント制作を担当。 2000年頃よりDJ、ライターとしての活動をスタート。 DJ活動の傍らでスペインのIBIZA島などヨーロッパ各国を周遊しながら、ダンス・ミュージックに限らず、リラックスに特化した「Chill Out(チルアウト)」空間での音楽演出など、独自の活動を探求する。 2008年からは作詞家として「NARUTO」「バクマン。」「鷹の爪」などのアニメ主題歌、NHK WORLD「domobics」(東京パフォーマンスドール+どーもくん)、水曜日のカンパネラとのコラボ作品「金曜日の花魁」、多くのアーティストにカバーされたSam Smithのグラミー賞受賞曲「Stay With Me~そばにいてほしい」などの日本語詞を担当。 2010年には渋谷道玄坂にて、ウォームアップ・バー「しぶや花魁 shibuya OIRAN」をオープン。店舗運営と連動して、自身が主宰するミュージック・ブランド「OIRAN MUSIC」を2014年に発足。コンピレーションCDのリリース、リミックス・ワークの配信、アートや音楽フェスとのコラボなど、「渋谷」をキーワードとしたコンテンツ提供を活発に行っている。 現在、渋谷区のコミュニティFM「渋谷のラジオ」第一月曜16時~、インターネット・ラジオ「block.fm」毎週金曜20時~に、レギュラー番組の選曲とナビゲーターを担当中。 Twitter: @yukikawamura821 Instagram: @yukikawamura821 Web: OIRAN MUSIC公式サイト
ブルーになる支度は出来ていなかったー加藤和彦『JOKER』|渋谷で君を待つ間に
引用元:幻冬舎plus
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