掟ポルシェのしゃれとんしゃあ通信 ~Vol.5~中編【アイドル総合】

[AdSense2]

掟ポルシェのしゃれとんしゃあ通信 ~Vol.5~中編

日本のサブカル界で異彩を放ち続ける掟ポルシェの月一連載!ブログやツイッターでは知ることができない、“掟ポルシェの今”を赤裸々に語り尽くす居酒屋フリートーク企画「掟ポルシェのしゃれとんしゃあ通信」。あなたの知らない“もう一つの世界”はこんなにもおもしろい!

【写真を見る】収録後に開催されたロマンポルシェ。ワンマンツアー札幌公演より

■ ボーカリスト特有の悩みっていうんですかね

――11/16が下北沢でロマンポルシェ。のワンマンツアー初日でしたけど、どうでしたか?

掟「前回の20周年の時は下北沢でしかライブをしないから全国各地から来てくれたってのもあるんですけど、その結果250枚チケットが売れたのと、招待客とか当日券とかいろいろ入れたら300人近く入っちゃったんですよ(笑)。ちょっと客入れすぎちゃったんでまずいなって思って、今回はもう最初から東名阪でやると。3カ所あるって言うんでバラけたっていうのと、前回の下北沢でギチギチに入れ過ぎたので『あんなに人が来るなら二度と行かない』っていう人も結構いたらしく、今回はもうゆとりをもって見られる人数しか入らなかったですね。だから今回はキャパの7割程度の客入りでしたね」

――名古屋と大阪はどんな感じでしたか?

掟「このロマンポルシェ。ってバンドは、曲と曲の間に説教っていうしゃべり(MC)がありまして、曲と説教が1曲ずつ1回喋るみたいな感じで、対バンなしで曲だけみっちりやるワンマンライブなんかもほぼやったことがない。やったとしても当時のマネージャーが『他のゲストが時間とるから、おまえら1時間でええやろ!』とか(笑)。長くライブやらせてくれなくて。やっても12~13曲しかやったことがなかったんですよ。今回はどこも18曲から20曲、2時間ぐらいやってるんですね。結構歌のパートが多い感じで。3~4曲歌って1回喋るみたいな。そんな感じにしてたんですよね。こんだけ大量に曲歌うと、名古屋の段階で喉が潰れちゃったんですよ。なにせ今まで真面目に歌ってなかったから」

――ああ、ツイッターで言ってましたね!

掟「で、翌日大阪(公演)がある。どうしてもライブやんなきゃいけない。どうしようっていうんで、それでツイッターで『喉が潰れちゃいました。明日ライブできないかもしれません。喉を回復するための何かいい方法知ってたら教えてください』って募集したところですね、意外な人がいろいろ教えてくれまして。ツイッターはやってないんだけど、ツイッターを見てた怒髪天の増子直純さんから『自分も喉潰れた経験がある』と。『そういう時は、オリーブオイルでうがいをする。で、曲間もオリーブオイルを舐めながらやれば何とか持つよ』って」

――へぇ!これはやったことがある人にしか分からないですよね!

掟「そうなんですよ。生まれてはじめてボーカリスト特有の悩みが訪れまして(笑)。で、これはエクストラバージンオイルでないとダメなんですって。それと、ナックルチワワの零ちゃんからもある漢方薬がすごい効くと教えてくれまして、それ買ってガンガン飲みましたね。漢方薬って意外と薄いんですよあれ。あんまり飲んじゃいけませんよみたいなこと書いてあるんですけど、とりあえず朝飲んで、ライブやる前もいっぱい飲んで、終わってからもいっぱい飲んでみたいな。20個くらい入ってる箱がライブ終わったら空になってました(笑)。それくらい飲んでなんとかこなせましたね。でも物販の時ってマイク使わないでしゃべるじゃないですか。物販でも大声出したりとかしてたら、もう大阪の打ち上げの時は声が出なくてずっと筆談してましたね。しゃべれなくて」

――大変でしたね。

掟「こんだけ潰れたの初めてだったんで、これ復活できんのかな、このまま一生ブルースマンみたいな声になったらやだなって思いましたけど、病院に行ってちゃんと薬を処方してもらったら10日ほどで治りました。それもまたツイッターでいい病院知らないかって呼びかけたら、ドレスコーズの志磨さんが教えてくれましたね。ツイッターのDMで。やっぱりみなさんね、ボーカリストの人は意外と喉潰れるっていう経験してるんですよね。でも、その話をこの間m.c.A・Tさんに取材に行ったんで話したら、喉潰れたこと一回もないって言ってましたけどね(笑)。天才!」

――あんなに歌ってるのに!(笑)

掟「あんなに歌ってるのに!すごい声量出てますからね!天才ですね。かと思うと、B’zの稲葉さんはベストな状態で歌うために、冷水は飲んだことがないみたいですね。ぬるま湯以下の温度は飲んだことがないんだって」

――へぇ!じゃあキンキンに冷えたビールとか飲んだことがないんですかね。

掟「ないんじゃないですかね。声をベストな状態に保つための飲み物しか飲んでないみたいな。すげえなって。かと思うと、A・Tさんみたいに気にしたこともないって、潰れたことも一回もないって人もいて。学生の時にカラオケやった以来潰れたことがないって言ってましたね(笑)。そういう人もいるんだなって。やっぱ天才は違うんですね」

■ みんな福岡のことを分かってないんですよね

掟「今回のツアーはお客さんも3カ所に分散させたおかげで、そんなに大阪も名古屋もそこまで入らず。名古屋は何かやるとお客さんが入ってくれるんで相性がいいんですけど、今回はそんなでもなかったです(笑)。でもまあ、どこもちゃんと儲けが出たんで」

――あ、そうですか!良かった!じゃあ来年以降もまた?

掟「んー、でもまあ頻繁にはできないかなって感じですね。ワンマンライブツアーは2年に一回くらいかな。まぁお金出してくれるならいつでもどこでもやりますけど」

――福岡もいつかやってもらいたいですね。

掟「福岡は俺すごく弱いんで、ちょっとどうかなって。本当はやりたいと言えばやりたいんですけど、ただもうお客さん入らないのが目に見えてるんで」

――サブカルに限らず他のアーティストも福岡は結構みんな苦戦してますよね。結構メジャーな方でもまあまあチケットが売れてない話は聞きますね。

掟「まあまあ売れない前提でやらなきゃダメですよ。福岡は。何かしら営業的な、放送局廻りをするとか、CDショップ廻りをするとか。そういう目的の一環でライブもあるくらいの感じじゃないと無理です。あとは福岡市内じゃなくて、前に言ったみたいに筑豊に行くとか、そっちの方が絶対芽があると思う。あとは福岡じゃなければまだいいんじゃないかって。大分とかの方がいいかもしれないし」

――なるほど!

掟「みんな福岡のことを分かってないんですよね。今度ド・ロドロシテルとBORISのツアーがあって、BORISは日本よりも海外の方がお客さんが入るようなバンドなんですけど、福岡はやってみないとなんともですね。好きな人だけ観てもらえばいいってことにしないと、この土地はダメなので」

――だから福岡は小箱が多いんですよね。

掟「そうですね。この前ももちパレスに初めて行ったんですよ。娘の保育園の発表会でがあって。あそこ結構メジャーなアーティストがツアーでやってくるから大きなハコなのかと思ったら (定員が)800しか入らないんですよ」

――あ、そうなんですか!

掟「椅子席のでっかいホールなんですけど、2階もないから800しか入らない。まぁ俺含めてサブカルの人たちはそこすら埋められないですけど」

――福岡サンパレスが大体2,000人ちょっとくらいですけど、ある程度有名なアーティストでも埋めきれない人がいますからね。

掟「筋肉少女帯が90年代に一度活動停止した時の理由が『筋肉少女帯自伝』って本に書いてあって、90年代中盤になって全国を回って満杯にならないホールが出てきたんだと。それが福岡と新潟。それで、福岡と新潟ではお客さんが入らないだろうから、そこではなかなかイベントをやらなくなったみたいで。でも俺が嫁の実家が天神で当時本屋をやってて、そこでトークイベントやってくれないかってお願いしたら、福岡集客不安だったと思うんですけど、快く受けてもらえました。ほんとありがたかったですね」

――それはいつ頃のお話なんですか?

掟「2015年くらいですね。何度かやっていただけましたね。大槻さんに。で、新潟でもミッツィー申し訳さんが2010年代にクラブをやってたんですけど、トークイベントを当時よくやってて、大槻さんにも出てもらえないかってことで俺が一応口利きしたんですよね。そしたらやっぱり新潟は入らなかった経験があるからということで実現しなかったんですよ。自分が得意な場所とそうでない場所ってみんな分かるじゃないですか。そういう意味でいうと、大槻さんレベルでも福岡ってやっぱり難しいんですよ。サブカルには厳しい街だなぁと」

■ 都会は意外とフラフラしてる人ががんばってるんですよ

――何ででしょうね。入らないですよね。福岡って。

掟「都会と言われているところは、4、50代くらいの独身の人たちが意外に元気があるんですよ。それに対して田舎にいる4、50代は、家庭があったり、あるいはもう疲れていてどうにもならなかったりするんで、文化よりも生活でいっぱいいっぱいなんですよね。そういう意味でいうと、俺はもう福岡は人がいっぱい住んでる大きな田舎だと思ってますから。歳とった人間がちょっと元気を保つのが大変みたいな。酒飲むのが精一杯みたいな。(選択肢が)コンサートと飲みに行くだったら、飲みに行くでしょ(笑)。そういうところはありますね。福岡は」

――なるほど。たしかにそうですね。

掟「多分若い子がやってるものはそれなりにまだ入ってるところはあるはずですよ。東京のクラブとかでもやっぱりお客さん全然入んなくて、若い子が聴くようなEDMとかがかかってるクラブは未だにお客さん呼べてるし、週末になると500人くらいワイワイ人が入ったりしてるんですよ。でも我々には無関係ですから。あとは単純にオッサンオバチャンにオールはキツい。ずっと立ってるのとか踊ってるのとか、そんな体力ないから無理でしょ」

――そうですねー

掟「昔っていわゆるナンパ箱みたいなのあったじゃないですか。踊るよりも音楽聴くよりもナンパ目的に行くやつもいましたよね。でもオジサンオバサンたちが主な客層のクラブイベントには流石にナンパ目的のやつなんていないじゃないですか」

――たしかに(笑)

掟「いろんな目的があって、当時はクラブとかにお客さんが来てたのに、今は目的が音楽を楽しむっていう一つしかないから。そこはやっぱ問題ですよね。音楽を楽しむ余裕がある4、50代は、福岡にはなかなかいないですよ。俺達みたいなキワモノは特に(笑)。昔はテクノのアーティストとか外タレとかよく来てましたけど、観に行ってる時にいろんな目的がありましたもんね。今はもう音楽を楽しむ人のためのイベント、純粋なお客さんしかいない。純粋な客ってそりゃ少なくなりますよ。田舎に比べて都会は世間体みたいなものもあまりないから、アイドルを観るために生きてるとかいう人が生きやすいですし、田舎ってそういうのがなかなか許され難いじゃないですか。特に福岡はそういうのが難しい気がしますね。俺が行ってるアイドルの現場は4、50代とかしかいないですもん。異常な白髪率の高さで」

――でもそういう人たちも来てくれるんですよね

掟「そうですね。そこをモチベーション掘り起こすのはなかなか難しいですね、福岡は。今のところロマンポルシェ。でやるときは、お客さんが入らない場所ではやらないでおこうと、お金が儲からないならやめようってスタイルにしてるんですよ。でもお金を払ってくれて呼んでくれる人がいればどこでも行くってスタイルでもあるんで、呼ばれればいいなって思うんですけど、難しいでしょうね。しゃれとんしゃあの街ですから。福岡は。やっぱりロマンポルシェ。なんてライブ行けば高確率でチンポ出てますから(笑)。チンポはしゃれとんしゃあの範疇じゃないでしょ(笑)。チンポとオシャレは真逆!」

(Vol.5後編は2月下旬公開予定)

■ 掟ポルシェ(おきて・ぽるしぇ)

1968年生。男気啓蒙ニューウェイヴバンド『ロマンポルシェ。』&ひとり打ち込みデスメタル『ド・ロドロシテル』での音楽活動、ピッチを一切合わせないアイドル曲オンリーDJ、読後一切頭と心に残らない酷いコラム著述業、アイドルイベント司会を手がける他、頼まれれば法に触れない範囲で大体のことはやる。2015年より福岡市西区に在住。(九州ウォーカー・田崎紀之)

コメント

タイトルとURLをコピーしました