カワムラユキ
誰かを待つ時間、あなたはどんな風に過ごすでしょうか。
その人が来たときの第一声を考えたり、そのあとの時間に思いを馳せたり、あるいはメールチェック、SNS、携帯ゲームなど、過ごし方はさまざま。
この連載では、そんな「待つ時間」にそっと寄り添う音楽を、DJ、作詞、音楽演出など幅広い活動をしているカワムラユキさんに毎回紹介していただきます。* * *
長く暮らした家までの帰り道を、いつのまにか忘れてしまった夜
微かな灯りを見失って、やがて痕跡を辿ることすらせずに、ただただ前に進み生き抜くことを
日々とはそんなもので、僕は何処からやってきたのか、始まりの記憶を心の奥にしまい込んで、頻繁には振り返らなかった
2011年3月11日14時46分、あの瞬間から、何もかもが
静まりかえったスクランブル交差点、見える限りの光の粒が闇に飲み込まれて
歴史や自然現象、運命と常識、僕の過去や君の未来について、息を潜めて悩めるだけ悩むということを
発展を遂げること、成功を手にする術、更なる充足感を求めて駆け抜けた日々
子供の頃に憧れた人生のレールを踏み外してからも、本能のままに欲望を掻きむしり
騙し騙され、気まぐれに弄ばれて、しなくても良い経験を体に刻んで
反動に突き動かされるまま、同じように誰かを傷つけた
記憶にすら残らないハイな時間、何度も何度も飽きるまで繰り返して
守り続けていた体温は徐々に奪われて、宿命の潮が粛々と満ちてゆく
大切な人、この世に居なければ、僕の影はない
飲み込んでゆく、影も形も跡形もなく、何もかもが、何もかも
なかったことには出来ない、前に進むためには、前に進む以外のことも
これからを生きるということ、とにかく今を生きる
どんなに追いかけられても逃げて
凍りつくような孤独をやり過ごして
僕の中に在るあなたと生きられたら
この世の縁で漂うまま、時には激しく、命の限りに生きて、生きて、生きて
そして眠ろう
RADWIMPS『夜の淵』2019年
■カワムラユキ
1978年8月東京生まれ、幼少期を仙台で過ごす。 98年頃よりフリーランスのプロデューサーとして、ヨーロッパのダンス・ミュージックのプロモート、様々な企業とのコラボレーションワーク、イベント制作を担当。 2000年頃よりDJ、ライターとしての活動をスタート。 DJ活動の傍らでスペインのIBIZA島などヨーロッパ各国を周遊しながら、ダンス・ミュージックに限らず、リラックスに特化した「Chill Out(チルアウト)」空間での音楽演出など、独自の活動を探求する。 2008年からは作詞家として「NARUTO」「バクマン。」「鷹の爪」などのアニメ主題歌、NHK WORLD「domobics」(東京パフォーマンスドール+どーもくん)、水曜日のカンパネラとのコラボ作品「金曜日の花魁」、多くのアーティストにカバーされたSam Smithのグラミー賞受賞曲「Stay With Me~そばにいてほしい」などの日本語詞を担当。 2010年には渋谷道玄坂にて、ウォームアップ・バー「しぶや花魁 shibuya OIRAN」をオープン。店舗運営と連動して、自身が主宰するミュージック・ブランド「OIRAN MUSIC」を2014年に発足。コンピレーションCDのリリース、リミックス・ワークの配信、アートや音楽フェスとのコラボなど、「渋谷」をキーワードとしたコンテンツ提供を活発に行っている。 現在、渋谷区のコミュニティFM「渋谷のラジオ」第一月曜16時~、インターネット・ラジオ「block.fm」毎週金曜20時~に、レギュラー番組の選曲とナビゲーターを担当中。 Twitter: @yukikawamura821 Instagram: @yukikawamura821 Web: OIRAN MUSIC公式サイト
あの瞬間から、何もかもがーRADWIMPS『夜の淵』|渋谷で君を待つ間に
引用元:幻冬舎plus
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