アフィ料率の下落に直面する、コマースパブリッシャーたち:「料率ゼロへの引き下げも」

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新型コロナウイルスの感染拡大が続くなか、収益源を多様化してきたメディア企業が試されている。

各種イベントが中止となり、世界的に広告市場が縮小するなか、コマース収益のあるパブリッシャーは、ますます大きくなる新型コロナウイルスがもたらす経済的影響への耐性が多少はあると見られている。ただ、それも現時点ではという話だ。

ニューヨーク・タイムズ(The New York Times)のワイヤーカッター(Wirecutter)や、メディア企業のフューチャー(Future)では、コマースコンテンツへのトラフィックが増加しており、そこからの収益アップが期待されている。だが裏を返せば、こうして急激に需要が増加することで、パブリッシャーのコマース収益が脅かされる可能性もあるという。というのも、小売企業がアフィリエイトプログラムを終了させたり、マーチャントが洗浄用品など、需要の高い商品のアフィリエイト料率をゼロに引き下げたりしているからだ。

「(スーパーマーケットの)テスコ(Tesco)などからは、同社のオンラインショッピングサイトに人を送り込んでくるなと要請されたが、無理もない。需要に対応しきれないのだ」と、テック系パブリッシャーのIDGで、ワールドワイドコンシューマー担当シニアバイスプレジデントを務めるサイモン・ジャリイ氏はいう。「在宅勤務や、それに必要なテクノロジーについてのコンテンツに対する需要が高まっており、そこでは商品がレコメンドされていることも多い。外付けディスプレイや、プリンター、ウェブカメラなどが急速に在庫切れを起こしている」。

コマース運営支援企業の対抗策

社会的距離をとり、自主隔離をするといった対策が定着するなか、自宅に仕事場を整備し、家で子供たちを勉強させながら、パンデミックにも備えようとする人たちが増えており、そのすべてがeコマースの需要につながっている。メディアレーダー(MediaRadar)の調査によれば、米国でのeコマース広告の支出は、2月17日からの週が480万ドル(約5.1億円)だったのに対して、3月9日からの週は960万ドル(約10億円)と急増している。パブリッシャーのコマース運営支援も行っているテック企業のソブロン(Sovrn)からはこんな話も聞こえてきた。同社が抱えるパブリッシャー数千社のコマースネットワークでの1日あたりのクリック数が、ここ2週間で25%増加し、約300万になったという。なかでも伸びているのが、ペット用品、ファッション、ホームオフィス関連のコマースだ。旅行、不動産、イベントといった業種でのクリックは当然ながら減少している。

パブリッシャーのコマース運営を手がけるテックプラットフォームのスキムリンクス(Skimlinks)によれば、コマース・コンテンツパブリッシャーがCPA(顧客獲得単価)から得る収益は2017年以降着実に伸びてきており、40%増加している。だが、抜け目のない小売企業は、需要に合わせて価格戦略を調整するものだ。そのため、小売企業がパートナーであるパブリッシャーに支払う料率を変更する傾向は、ここ2年間で広がってきている。そして新型コロナウイルスの影響を受け、ここ4週間でこの傾向は加速しており、需要の高いアイテムも料率変更の対象になってきた。

ソブロンによると、ある大手小売企業が3月13日、健康、美容、ウェルネス、家庭用品、パーソナルケア、ベビー、食料品といったカテゴリの商品にかかる料率をゼロに設定したという。ソブロンはこの小売企業の名前を明かしていない。こうしてパブリッシャーは手数料ゼロで小売企業にトラフィックを送ることになり、収益の25%を失う可能性が出てきている。ソブロンはパブリッシャーに対策を提案するとしている。

「別のマーチャントに消費者のトラフィックを送ることも可能だという、非常に現実味のある脅しでもしない限り、マーチャントは必ず自分たちの利益にとって最善の行動を取るものだ」と、ソブロンのCEO、ウォルター・ナップ氏は指摘する。「当社はすでに、あらゆる方面にプレッシャーをかけるツールを開発した」。

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