カワムラユキ
誰かを待つ時間、あなたはどんな風に過ごすでしょうか。
その人が来たときの第一声を考えたり、そのあとの時間に思いを馳せたり、あるいはメールチェック、SNS、携帯ゲームなど、過ごし方はさまざま。
この連載では、そんな「待つ時間」にそっと寄り添う音楽を、DJ、作詞、音楽演出など幅広い活動をしているカワムラユキさんに毎回紹介していただきます。* * *
春の鬱、あたたかく、夢うつつの夢として
空っぽの明治通りを擦り抜ける、汚れた風よ
千駄ヶ谷小学校から、北参道、そして代々木
生命の気配を求めても見当たらない
捻じ曲がった時空の壁が、ゆっくりと砕け散って
それでも月は満ちて、薄桃色の光を放ち、人々の視線を集める
放たれるはずの躍動は封じ込められて、祝祭は何一つなく
気怠いムードだけが蔓延している
何を想う、誰に従う、自分を信じる
何に打ち勝つ、誰が変える、自分を見下す
赤い糸は途切れて、いつの間にか春風にさらわれた
芽吹くはずの運命は、跡形もなく、うちひしがれた人の影が空洞の街を彷徨う
そう、これは
ぼくたちの失敗だった
君だってもう、知っていたよね?
ROTTENGRAFFTY『ぼくたちの失敗』Getting Better、2019年
■カワムラユキ
1978年8月東京生まれ、幼少期を仙台で過ごす。 98年頃よりフリーランスのプロデューサーとして、ヨーロッパのダンス・ミュージックのプロモート、様々な企業とのコラボレーションワーク、イベント制作を担当。 2000年頃よりDJ、ライターとしての活動をスタート。 DJ活動の傍らでスペインのIBIZA島などヨーロッパ各国を周遊しながら、ダンス・ミュージックに限らず、リラックスに特化した「Chill Out(チルアウト)」空間での音楽演出など、独自の活動を探求する。 2008年からは作詞家として「NARUTO」「バクマン。」「鷹の爪」などのアニメ主題歌、NHK WORLD「domobics」(東京パフォーマンスドール+どーもくん)、水曜日のカンパネラとのコラボ作品「金曜日の花魁」、多くのアーティストにカバーされたSam Smithのグラミー賞受賞曲「Stay With Me~そばにいてほしい」などの日本語詞を担当。 2010年には渋谷道玄坂にて、ウォームアップ・バー「しぶや花魁 shibuya OIRAN」をオープン。店舗運営と連動して、自身が主宰するミュージック・ブランド「OIRAN MUSIC」を2014年に発足。コンピレーションCDのリリース、リミックス・ワークの配信、アートや音楽フェスとのコラボなど、「渋谷」をキーワードとしたコンテンツ提供を活発に行っている。 現在、渋谷区のコミュニティFM「渋谷のラジオ」第一月曜16時~、インターネット・ラジオ「block.fm」毎週金曜20時~に、レギュラー番組の選曲とナビゲーターを担当中。 Twitter: @yukikawamura821 Instagram: @yukikawamura821 Web: OIRAN MUSIC公式サイト
放たれるはずの躍動は封じ込められてーROTTENGRAFFTY『ぼくたちの失敗』|渋谷で君を待つ間に
引用元:幻冬舎plus
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