恋愛リアリティーショーが面白いのは日本だけじゃない? 各国の番組にみる恋愛事情の違い【アイドル総合】

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恋愛リアリティーショーが面白いのは日本だけじゃない? 各国の番組にみる恋愛事情の違い

 アイドル戦国時代、お笑い芸人戦国時代があったように、一時代を築くカルチャーというのはブームと共に瞬く間に膨れ上がり、群雄割拠の時代が訪れる。恋愛リアリティショーにおいて2010年代後半から2020年代はまさにこうした戦国時代の渦中といえよう。

【場面写真】『さよならプロポーズ』が示している、日本人カップルの現実

 これまでも『あいのり』や『テラスハウス』(共にNetflix)が話題になることはあったが、それぞれは一足先に独立して人気を獲得していた印象で、その後、『バチェラー』シリーズ(Amazon Prime Video)や『オオカミ』シリーズ(ABEMA)で恋愛リアリティショーの注目度は一気に上がる。国内のリアリティショーだけではなく、『ラブ・イズ・ブラインド ~外見なんて関係ない?!~』(Netflix)や『HEART SIGNAL』シリーズ(ABEMA)など海外作品の配信も積極的になってきた。

 そんな中、国内ではABEMAが様々な層に向けた恋愛リアリティショーに力を入れている。『オオカミ』シリーズ、『恋愛ドラマな恋がしたい』シリーズ、『今日、好きになりました。』シリーズなど、ターゲットや趣向を変え様々な恋愛リアリティショーを配信し、恋愛を独自の視点から捉えた作品を多く作ってきた。今回はそんな恋愛リアリティショーにおいて、各国の作品を例に挙げながら国ごとの違いや特徴について紐解き、作品にどう影響しているのかを探っていきたい。

・『さよならプロポーズ シーズン2』(ABEMA)が見せる日本人カップルの現実
 『オオカミ』シリーズや『今日好き』シリーズがティーン向けに制作され、恋に落ちる瞬間をロマンチックに、そしてドラマチックに捉えているのに対し、『さよならプロポーズ』シリーズは付き合って2~3年などリアルな年数のカップルが「結婚」という新たなステップに踏み出すまでの紆余曲折を描く。様々な理由で「結婚」に踏み切れないカップルに、異国での7日間の旅を通して“別れる”か“結婚する”かの究極の選択を迫り、人生の背中を押すという作品だ。

 日本人が「結婚」に縛られる傾向はまだまだ払拭できない。現在無料配信中の『さよならプロポーズ シーズン2』にて取り上げられるカップルも、30代前半の女性が出産を意識するなら、結婚するのかどうかを早く決断したいという理由のもと参加している。そして結婚に踏み切れない理由は、経済的な問題が少なくない。ともすればドキュメンタリー番組として社会的側面から切り込めそうな主題を、恋愛リアリティショーとしてキャッチーに、そして多くの“当事者意識を持つ人々”をドキドキさせるように描き、話題を呼んでいる。お互いに好きだけれど、共に生活をするパートナーにはなれないかもしれない。そんな残酷さが、視聴者をハラハラさせ、ある種の問題提起として、さらに深く熱中させるトリガーになっている。

・韓国No.1恋リア『HEART SIGNAL3』(ABEMA)が見せる韓国での恋愛における理想像
 一方、韓国で制作されている『HEART SIGNAL』シリーズは、若い男女6人が「シグナルハウス」という名のシェアハウスで1ヵ月の間、寝食を共にする。入居中は『直接異性に告白できない』、『毎晩気になる異性に匿名でメッセージを送る』などのルールに従って暮らすことになる。本作は予想団と呼ばれるスタジオの芸能人や著名人が、この男女間のロマンス(ラブライン)を推理し、当たると賞金がもらえるというゲーム性もある作品だ。

 特徴的なのは、参加しているメンバーが獣医学部の学生や医科大学のインターンなど高学歴であることや、エンジニアリングマネージャー、ブランディングディレクターなど、高収入の職業であるかそれを見込める人物であること。さらにルックスも整っており、美男美女で揃えられている。日本以上に過酷な学歴社会といわれる韓国では、高学歴・高収入であることの価値は日本以上に高いのだろう。日本の恋愛リアリティショーでは必ずといっていいほど、経済力はないが夢を追うアグレッシブな若者が参加しているため、大きなギャップを感じた。また韓国は美容に対する意識も非常に高いと言われている。韓国のアイドルたちは過酷なダイエットやトレーニングでプロポーションを維持し、美意識を高く持つことが憧れの対象になっているのだ。こうした背景から、高学歴の美男美女が繰り広げる恋愛リアリティショーはある種、憧れの対象であり“目指すべき指標”としての捉え方もあるのではないかと推測する。

・『ラブ・イズ・ブラインド』から見る内面の結びつきの重要さ
 アメリカの恋愛リアリティショー『ラブ・イズ・ブラインド ~外見なんて関係ない?!~』は、アジアとは異なる視点で展開する。独身の男女がそれぞれ“ポッド”と呼ばれる小部屋に入り、壁を隔てて互いの声だけを頼りに宗教、人種、結婚観、子供の有無などについて話し合い、外見ではなく内面の結びつきを求めて顔も知らぬままカップル成立まで進む。

 初対面を果たした後はバカンスや互いの両親との面会などを経て結婚式を挙げることがゴールとなる本作は、出会いから結婚まで全てのステップを追うという面でもアジアの恋愛リアリティショーとは大きく異なる。参加者の恋愛を丸ごと追いかけるというスケールの大きさが何と言ってもアメリカらしさだろう。さらに多種多様な人種、宗教、価値観を持つ人々と共に暮らす中で、「内面での結びつきを重視したい」という切り口はより強固な意味を持つ。

 日本人にとっては、人種差別や宗教における考え方の相違によって、恋愛さえも困難になることはなかなか想像しにくいだろう。多様性を広げた上で、様々なしがらみから解放され、よりパーソナルな部分にフォーカスしてパートナーを選びたいという欲求は、こうした多民族国家ならではの背景が関係していると感じる。

 このように恋愛リアリティショーは、ただ単一的に恋愛を定点観測しているわけではなく、それぞれの国が持つバックボーンを反映しながら、恋愛を楽しむという性質を持っている。そんな中、やはり独自の過激さを内包して視聴者の興味や関心を得ているのは明白だ。『さよならプロポーズ シーズン2』ではその過激さは、「結婚」という目的に対して立ちはだかる“経済的困窮”や“出産”など現実的でシビアな問題として描かれる。『HEART SIGNAL3』では参加者の恋愛を予想団が予想するだけではなく、そこにゲーム性があることだろう。『ラブ・イズ・ブラインド ~外見なんて関係ない?!~』では、宗教、人種を超えた「内面のつながり」というテーマ自体がかなり最先端の考えであり、ある種の過激さを孕んでいると感じる。

 こうしたセンセーショナルなテーマを切り口に、恋愛リアリティショーは時に最大のエンターテインメントを、時に重要な問題提起をしながら我々視聴者を楽しませてくれている。一緒にドキドキしたり、一喜一憂しながら、「恋愛」と「人生」について考えるきっかけを与えてくれているのだ。 Nana Numoto

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