Uru、iri……2020年前半、魅力あふれるニューカマーの最新作をピックアップ

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Uru、iri……2020年前半、魅力あふれるニューカマーの最新作をピックアップ

 “緊急事態宣言でまったく外出できない大型連休”という前代未聞の状況のなか(この期間も戦っている医療関係者のみなさん、生活インフラを守るために働いている方々には感謝しかありません)、それでも音楽は我々の近くにあり、心と身体を良い方向に導いてくれると信じます。今回は“2020年前半、ブレイク真っ最中”のアーティストの新作を紹介。この先の音楽シーンを担う、魅力あふれるニューカマーの楽曲をじっくりと味わって。

●Uru『オリオンブルー』
 1srアルバム『モノクローム』(2017年12月)から約2年3カ月ぶりにリリースされたニューアルバム『オリオンブルー』(2020年3月)には、このタイトルが示す通り、彼女の音楽的な“色合い”、深遠で美しい青色を想起させる楽曲が並んでいる。これまではボーカリストとしての魅力――切なさ、憂いを響かせ、心地よい解放感に導くようなーーを押し出してきた彼女だが、「プロローグ」(ドラマ『中学聖日記』主題歌)、「あなたがいることで」(ドラマ『テセウスの船』主題歌)などのヒット曲を含む本作では、シンガーソングライターとしての才能を如何なく発揮している。アコースティックな音響とともに、ソウルミュージック、R&Bの風合いをたたえたメロディを響かせる「今 逢いに行く」(編曲:トオミヨウ)、エレクトロニカ的なテイストと浮遊感に溢れた旋律、“本能のままに揺れ合って”という歌詞が溶け合う「space in the space」(編曲:Kan Sano)。作詞、作曲に対する彼女のセンスと凄腕のアレンジャーの化学反応こそが、本作のキモだと思う。

●iri『Sparkle』
 前作『Shade』(2019年3月)はどこか憂いを感じさせる、ダウナーな雰囲気を持った作品だったiri。それは“その時期の自分を素直に表現したい”という意思の表れでもあったのだが、その後の1年間の経験(Sexy Zone、私立恵比寿中学への楽曲提供、『井上陽水トリビュート』への参加など)を経て彼女は、自身の音楽的なルーツ、変化し続ける感情をよりストレートに表現してみせた。ケンモチヒデフミ(水曜日のカンパネラ)、荒田洸(WONK)、Shin Sakiura、Mori Zentaro、Kan Sano、ハマ・オカモト(OKAMOTO’S)といったクリエイター/ミュージシャンたちと共に作り上げたトラックは、R&B、エレクトロ、ファンク、ソウル、ヒップホップなど、まさにジャンルレス。その軸にあるのはもちろん、彼女自身のボーカルだ。トレンドを感じさせる楽曲も多いが、彼女の豊かなブルーズをたたえた歌によって本作は、タイムレスな力を獲得しているのだと思う。個人的ベストは心地よい揺れとソウルフルな歌声が絡み合う「miracle」。

●マカロニえんぴつ『hope』
 多彩なポップセンス、生々しい臨場感を含んだサウンド、そして、バンドの中心であるはっとりのエモーショナルな歌によって、現在のバンドシーンのなかでも際立った個性を発揮しまくっているマカロニえんぴつ。バンドの知名度を上げた「ブルーベリー・ナイツ」、〈ハロー、絶望〉というラインが突き刺さる「ヤングアダルト」を収めた2ndフルアルバム『hope』で彼らは、“音楽的に何でもありなのに、どこを切ってもマカロニえんぴつ”というレベルに到達した。モータウンっぽい香りを取り入れたポップチューン「レモンパイ」、荘厳なストリングスをフィーチャーしたサウンドとともに“絶望の先にあるはずの希望”を描き出す「hope」、曲調が次々と変化し、どんどんBPMが上がっていく「この度の恥は掻き捨て」、ワウギターを効かせたソウルフルな楽曲「愛のレンタル」。ここまで幅広い音楽を表現できるバンドは、本当に稀。まるで(はっとりが敬愛する)ユニコーンの『服部』のようだ。

●Natural Lag『ナチュラルストーリー』
 Natural Lagは、ダンス&ボーカルグループDa-iCEのボーカル・花村想太のバンドプロジェクト。ダンストラックが中心のDa-iCEでは“幅広い音域と透明感のあるハイトーンボイス”というイメージが強い花村だが、このプロジェクトでは“等身大”という言葉が似あうナチュラルな歌声を押し出している。すべての楽曲の作詞・作詞を花村が手がけているのもポイント。まっすぐな恋心を歌った「蜃気楼」、大事な友達に向けて“一緒にがんばろう”とエールを送る「ファイティング・ソング」など、『ナチュラルストーリー』は彼自身の人生観、ふだんの生活ぶりを反映させることで、リスナーにとっても身近に感じれる作品に仕上がっている。生楽器中心のサウンド、表情豊かなボーカルを含め、ソロシンガーとしての活躍にも大いに期待したい。 森朋之

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