「だまされた分を取り戻そうと…」 なぜ現金を詐取された男が「受け子」に転落したのか【アイドル総合】

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引用元:産経新聞
「だまされた分を取り戻そうと…」 なぜ現金を詐取された男が「受け子」に転落したのか

 振り込め詐欺に加担した男は、かつて詐欺被害者だった-。受け子として東京都内の女性から現金約700万円をだまし取ったとして新宿区の男(68)が逮捕された。男は別の詐欺事件で100万円以上の現金を詐取され、警視庁に被害相談をしている最中、その詐欺グループからの誘いに乗った。「受け子をすれば金を返すといわれた」。警視庁は違法性を認識しながら犯行に及んだとみている。(千葉元)

【図】社会情勢に合わせて変化する詐欺の手口

 ■駅名に食い違い

 後に、警視庁に逮捕されることになる藤代雅美容疑者が、牛込署に「被害」を相談したのは、昨年11月上旬のことだった。

 「訴訟最終通告」などと書かれたはがきが自宅に郵送されてきて、記載された番号に電話をかけると、男に「アダルトサイトの料金が支払われていない」と言われたという。都内の駅で詐欺グループの女と待ち合わせ、現金計100万円を渡してしまったとし、牛込署は詐欺事件として捜査に着手。藤代容疑者に詳しく話を聞いていた。

 だが、12月下旬、何度目かの聞き取りで捜査員が異変を感じ取った。被害の状況を確認する中で、現金を持って向かうよう指示された駅名について、回答が二転三転したという。

 捜査関係者は「自分がやった受け子の経験と混同しているようだった」と打ち明ける。不審に感じた捜査員が問い詰めると、藤代容疑者は「自分も受け子をやった」などと犯行をほのめかし始めたという。

 ■「指示通りに」

 裏付けを進めると、40代女性が民事訴訟の取り下げ名目で現金約700万円を詐取された被害が確認され、牛込署はこの事件への受け子容疑で先月、藤代容疑者を逮捕した。

 犯行の契機は、自身が詐欺被害に遭った翌月、詐欺グループの男からの電話だったという。「指示通りに動けば、金が返ってくる」と言われたとされる。

 捜査関係者によると、逮捕当初、「だまされた分を取り戻そうと思った。指示に従っただけで、被害者から受け取ったのは書類だと思っていた」と容疑を否認していたが、その後、「本当は(現金だと)分かっていた」などと認める供述をし始めた。

 牛込署は、被害を届け出て以降、他にも数件の詐欺事件にも関与していた疑いがあるとみている。

 ■過去にも同種事案

 牛込署によると、藤代容疑者の自宅はJR飯田橋駅近くの住宅街に建つ一軒家で、親族と同居。近くに住む女性は「人当たりはよく、詐欺をするような人には見えなかった」と驚く。

 過去にも、詐欺被害者から加害者へ転落するケースはあった。

 今年2月、アイドルグループのコンサートのチケット代を詐取したとして、18歳の少女が目白署に逮捕された事件では、少女が実際にはチケットを持っていないにも関わらず、会員制交流サイト(SNS)で「チケットを譲る」と投稿。購入希望者に現金を振り込ませた。「同じ手口でだまされたことがあった。訴え出ないと思った」と供述したという。

 捜査幹部は「オレオレ詐欺に遭うと『なぜだまされたのか』と親族から責められ、一人で抱え込むことがある。その結果、善悪の区別がつかなくなり、犯罪に手を染めることも考えられる」と指摘している。

 都内の特殊詐欺の被害は年々増加している。警視庁によると、認知件数は平成27年に1879件だったが、令和元年では3815件に増加。被害金額も約67億円から75億円超と跳ね上がっているという。

 今年に入ってからは、キャッシュカード詐欺盗による被害が目立ち、4月末までの被害金額は約6億7千万円と、前年同期比で4億円以上増加している。

 詐欺盗は「あなたのカードが不正に使われている」などと嘘の電話をかけた上で自宅を訪問。隙を見てカードを盗む手口だ。警視庁犯罪抑止対策本部は、オレオレ詐欺などよりも認知度が低く、信用してしまう場合が多いとみている。

 一方、新型コロナウイルスに絡み「マスクを送る」「家族は何人いるか」などとする詐欺につながる恐れもある不審な電話が5月19日現在で74件確認されており、警戒を強めている。

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