「キャストの力で大いに助けられた」桜井弘明監督がシリーズへの思いを語る<斉木楠雄のΨ難 Ψ始動編>

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「キャストの力で大いに助けられた」桜井弘明監督がシリーズへの思いを語る<斉木楠雄のΨ難 Ψ始動編>

実写映画化もされて話題になった、アニメ「斉木楠雄のΨ難」シリーズの最新作「斉木楠雄のΨ難 Ψ始動編」が、12月30日(月)からNetflixにて全世界一斉配信される。

【写真を見る】「現場にいないとテンションが下がる」という声優を明かす桜井監督

原作は麻生周一による同名コミック「斉木楠雄のΨ難」(集英社ジャンプ コミックス刊)。生まれつき超能力を持つ高校生・斉木楠雄の日常を描く、超能力(サイキック)コメディーだ。

アニメは、1話を4分間で次々と描いていく連作形式となっており、エピソードやシリーズを重ねるごとに速くなっていくセリフスピードも話題になっている。

ザテレビジョンでは、テレビシリーズ第1期、第2期、そして完結編に引き続き、今回の「Ψ始動編」を手掛けた桜井弘明監督にインタビューを実施。制作現場の舞台裏、アフレコの様子などを語ってもらった。

■ 「『斉木楠雄のΨ難』がこれだけ愛されるのは、原作にそれだけの力があるから」

――「斉木楠雄のΨ難」は、地上波のテレビで3シリーズが制作された後、今回Netflixで「Ψ始動編」が制作されるという、ある意味で“恵まれた作品”だと思いますが、この作品がこれだけ長く支持される理由を、どのように自己分析されますか?

桜井弘明:原作にそれだけの力があるからですね。そして作品が愛される理由は、各キャラクター(の個性)がそれぞれ立っているから。

どんどんキャラクターが増えていくんだけど、なかなか出られないキャラクターでも、登場したときにちゃんと爪痕を残していくから、また出てきてもすんなり受け入れられる。また、キャラクター同士の絡みもとても楽しい。そのあたりは、原作の元々のパワーですかね。

アニメだけで言うなら、キャストの豪華さもあります。だってみんな主役級なんだもの(笑)。

――桜井監督は、実写版はご覧になりましたか?

桜井:見させていただきました。個人的には、実写もやってみたいという気持ちはあります。ただ全く勝手が違うから、現場に迷惑を掛けると思うので、人には言わないようにしてるんだけど(笑)。

■ 「アフレコをやってみたら、結局うまく収まったからいいや」

――絵コンテや脚本を直す時など、「斉木楠雄のΨ難」 を制作する上で気を付けていたポイントは?

桜井弘明:第1期の時はこっちも手探りだったんですが、とにかく原作のセンスがいいので、脚本で余計なネタを入れないということですね。自分としても原作に対するツッコミを足したりしがちなんだけど、それをできるだけ抑えていました。

あとは、どうしても尺に収まらない時、どのせりふを切るかという問題は常にありました。「漫画ではこのせりふはOKだけど、テレビで放送する時は引っ掛かる」というような権利関係の問題もあるので、そこをどう置き換えるかも気を付けていましたね。

――原作付きの作品だと、せりふを削るのにも時間が掛かると思いますが、カッティング(編集)は大変でしたか?

桜井:そんなに長くはならなかったんですよ。できるだけ絵コンテの段階で尺を詰めるようにしていましたから。

ただ、どうしても30~40秒くらいオーバーするんです。たまに1分を超える時があると、4分の作品で1分を切る作業はすごく大変でした。

そうなるとせりふを削るしかないので、迷うことなくズバズバ切っていくんですけど、後で原作サイドから「ここのせりふは戻してほしい」と言われることも、最初のうちはありましたね(笑)。

――(斉木楠雄役の)神谷浩史さんも会見で、「最初は今よりせりふのスピードもゆっくりだったけど、途中で監督のミスから速くなっていった」というエピソードを明かしていました。

桜井:一度、修正で短くしたせりふをキャストに伝え忘れていたんだけど、アフレコをやってみたら、結局うまく収まったからいいや、ってことがあって(笑)。そこから多少、修正の仕方も変わりましたね。自分でしゃべっても入らないけど、このキャラなら多分うまく入れるだろうと。特に女性陣はそうでした。

――つまり、キャストの力で助けられたことも…?

桜井:それは大いにありました。なぜこんなスピードでクリアに聞こえるんだろうって。日本の声優さんはすごいなあ、と(笑)。

■ 「何とか毎回アフレコに照橋さん(CV:茅野愛衣)を呼びました(笑)」

――「Ψ始動編」はNetflixでの配信となりますが、制作する上で、コンプライアンスの問題や放送尺など、地上波のテレビ放送との違いはありましたか?

桜井:違うところで言うと、コンプライアンス関係はまずあります。

あとは、今回は原作で残っている話をやろうということだったんですが、全世界配信だと伝わりにくいと思った話は外したりして、話の取捨選択は初めに多少ありました。でも、「これ大丈夫かな?」っていうエピソードも意外と入れられたりして。日本の文化をそのまま世界に発信しているエピソードなら大丈夫なのかなと。

あと、尺に関しては、本来なら配信作品は自由でいいわけです。でも、今までの流れと同じフォーマットでやった方がトータリティーが出るかなということで、「4分でやりましょう!」ということになりました(笑)。

制作発表の時、神谷浩史くんからも「おい! なぜ4分だ!」と言われましたが、「仕方ない、そういう作品なんだよ」と答えておきました(笑)。

それから、テレビアニメで第1期・第2期などを作る場合、普通はシリーズごとにオープニングとエンディングを変えるのが普通なんですけど、配信の場合はそれも気にしなくていいということで、本編に専念できたということもよかったです。

あとは、残った話で照橋さん(CV:茅野愛衣)が出てないと、神谷くんも僕もテンションが下がるので、何とか毎回アフレコに照橋さんを入れるとか、相卜(CV:喜多村英梨)を入れるとか、やっぱりメインどころのキャラはなるべく出してあげたいなと、原作にいなくても何とか隙間を埋めるように気を付けました。

■ 「アフレコ現場は真剣勝負。でも和気あいあいとしていました」

――スピード感のあるせりふ回しが特徴の「斉木楠雄のΨ難」シリーズですが、アフレコ現場はどのような雰囲気でしたか?

桜井弘明:真剣勝負でした。誰かがつまずいたら一気に総崩れになるぞという雰囲気で、キャストのみんなも「行けるとこまで行くぞ!」という感じで、僕は面白かったです(笑)。

神谷くんは、5~6行ある長ぜりふをクリアした時に「よし!」というガッツポーズをしてましたね。拍手はいちいちしなかったけど(笑)。

現場は和気あいあいとしていましたよ。少なくとも僕はそう感じてました。家で一人で練習した時はせりふが入らなかったけど、現場のみんなのテンションでアフレコしてみるとせりふが入った、という話も(キャストから)聞きましたね。

第1期最初の頃、小野大輔くん(燃堂力役)は、アフレコの前に「おはようございます! 監督、このせりふ入らないんですけど~」って迫ってきたことがありましたね。その時は切ったところを伝え忘れてたんで(笑)。

■ 「原作ファンががっかりしないように、原作は必ずリスペクトする」

――先日、「斉木楠雄のΨ難」原作者の麻生周一さんが、でんぱ組.incの古川未鈴さんとの結婚を発表されました。麻生さんのご結婚について、どう思われますか?

桜井:まずは、おめでとうございます(笑)。

あらかじめ発表の前に、結婚されるということは聞いていたんですが、お相手までは聞いていなくて。ニュースが出た時に、みんなで「え、そうなんだ!」ってなりました。ニュースを見て初めて知ったんですよ。

――「斉木楠雄のΨ難」 に限らず、原作付きのアニメを制作する上で大変なことはありますか?

桜井:原作があるっていうことは、先に漫画がある、つまり原作ファンの読者が先にいるわけです。原作ファンがアニメを見た時にがっかりしないように、そして原作を知らない人も取り込めるように、原作は必ずリスペクトするようにしています。

ですから、「(原作に)忠実に」ではあるんですけど、媒体が違うと表現方法も違ってくるので。漫画の場合は、読者が自分の好きなタイミングや間で読めるけど、アニメではそれができないので、(自分が感じた)時間軸が加わるということを意識していました。

また、自分だけじゃなく、一緒に作っているスタッフの反応も気にしています。一人で突っ走って、後ろに誰もついてきていないのが嫌だから、やっぱりみんなで作ろうよと。そうすると、スタッフから「原作のこのコマ、見落としてないですか?」といった意見も出るので、細かいところまで原作を追求することができるんです。

■ 「のんきでバカバカしくて楽しい作品が好き」

――音楽活動もされている桜井監督ですが、音楽のための時間はどのように作られているのでしょうか。また、音楽活動は、アニメ作りにどのように活かされているのでしょうか?

桜井弘明:今はバンド活動はしてないんですけど、近所のセッションハウスに行ける時は演奏しています。

アニメで言うと、(劇中の曲で)たまに自分でベースを弾いているんですよ。あと、たまにせりふが歌みたいになっている時があって、そういう場合、普通は役者さんがアフレコの時にアドリブで歌っぽく演じるんですけど、僕はそれが嫌で。

以前、別作品で(声優さんから)「監督! 来週(収録分の台本で)ここ(のシーンで)歌うみたいになってるんですけど、曲はあるんですか?」って言われたので、「じゃあ、僕が作るよ」って(笑)。それ以来、自分で曲を作るようにしています。

カッティングで尺が決まったら、その尺でオケを作って、アフレコ前日までに役者さんに届けて。尺を決めて曲を作るっていうのが、なんか楽しくなっちゃったんですよね。本来はやらなくてもいいことなんですけど。

――コメディー色の強い作品を多く監督されていますが、オリジナル企画など今後やってみたい作品やジャンルはありますか?

桜井:オリジナルでも原作付きでも、のんきでバカバカしくて楽しい作品なら、どんどんやりたいですね。

バトルものはあんまり得意じゃなくて、柔らかいやつが好きなんです。

「これはこうでなくてはいけない」っていう話よりは、「こうであってほしいけど、こういう見方もあるよね」というような、いろんな見方ができる作品が一番楽しいなと思います。

自分がこう思っていても、スタッフから別意見が出て、面白ければ取り入れることができる、そんな作品がやりたいです。

――最後に、これから「Ψ始動編」を見るファンに向けて、一言お願いします。

桜井:原作の最後の最後まで、アニメ化できるところは全部、配信という形で世界中にお届けします。

僕自身も楽しみだったことがようやくお見せできるので、それぞれ好きな感じでお楽しみください。

(ザテレビジョン)

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