カワムラユキ
誰かを待つ時間、あなたはどんな風に過ごすでしょうか。
その人が来たときの第一声を考えたり、そのあとの時間に思いを馳せたり、あるいはメールチェック、SNS、携帯ゲームなど、過ごし方はさまざま。
この連載では、そんな「待つ時間」にそっと寄り添う音楽を、DJ、作詞、音楽演出など幅広い活動をしているカワムラユキさんに毎回紹介していただきます。* * *
なまぬるい風が騒いでいる
あちらは賑やか、こちらは静か
漂う憂鬱には向き合いたくない、印象的な一言もない
そう、ここは楽園、あそこは地獄
君だけには伝えたい
いま僕が何処にいるのかを
スクランブル交差点のカウントダウン
ただ時が流れてゆくだけを、誰かが決めた法則で
冷え切ったムードの中で、適当な熱を探している
でもそれは暖かい、擦れるように触れ合えば温いよね
君は昔から知っていた、この世界は空っぽだって
既に自転を辞めた者たちが、終末へと向かわずに留まるように、手を焼いている
僕と君は誰にも言わない秘密を共有していた
目隠しをして、猿轡をして、湿らせた革の鞭で
自我を持った亀が僕で、鶴のように君は下着を身につけなかった
快感に貫かれて流れた涎、許されるまで眠気を封じた
恥ずかしくて醜いところを痛ぶって
可愛らしさを着飾って隠して
心だけは裸になって、縛ったり翻弄したり、すべてを信用しあっていたから
この世界は征服者と降伏者しか必要としていない?
君と僕はそのどちらでもなくて、冷えた熱を探して絡み合って、満たされて生きていた
愛は世界に死ぬ
世界の為に愛は死ぬ
僕は思い出に寄り添いながら、遠い南国で人生の交差点を振り返る
君はあの時、向こう側に行ってしまった
悦びも哀しみも紙一重、撃ち抜かれて抹消されるなら
骨の髄まで楽しんで、人知れずに息耐えて
ザ・ピーナッツ『恋のバカンス』1963年
■カワムラユキ
1978年8月東京生まれ、幼少期を仙台で過ごす。 98年頃よりフリーランスのプロデューサーとして、ヨーロッパのダンス・ミュージックのプロモート、様々な企業とのコラボレーションワーク、イベント制作を担当。 2000年頃よりDJ、ライターとしての活動をスタート。 DJ活動の傍らでスペインのIBIZA島などヨーロッパ各国を周遊しながら、ダンス・ミュージックに限らず、リラックスに特化した「Chill Out(チルアウト)」空間での音楽演出など、独自の活動を探求する。 2008年からは作詞家として「NARUTO」「バクマン。」「鷹の爪」などのアニメ主題歌、NHK WORLD「domobics」(東京パフォーマンスドール+どーもくん)、水曜日のカンパネラとのコラボ作品「金曜日の花魁」、多くのアーティストにカバーされたSam Smithのグラミー賞受賞曲「Stay With Me~そばにいてほしい」などの日本語詞を担当。 2010年には渋谷道玄坂にて、ウォームアップ・バー「しぶや花魁 shibuya OIRAN」をオープン。店舗運営と連動して、自身が主宰するミュージック・ブランド「OIRAN MUSIC」を2014年に発足。コンピレーションCDのリリース、リミックス・ワークの配信、アートや音楽フェスとのコラボなど、「渋谷」をキーワードとしたコンテンツ提供を活発に行っている。 現在、渋谷区のコミュニティFM「渋谷のラジオ」第一月曜16時~、インターネット・ラジオ「block.fm」毎週金曜20時~に、レギュラー番組の選曲とナビゲーターを担当中。 Twitter: @yukikawamura821 Instagram: @yukikawamura821 Web: OIRAN MUSIC公式サイト
悦びも哀しみも紙一重、撃ち抜かれて抹消されるならーザ・ピーナッツ『恋のバカンス』|渋谷で君を待つ間に
引用元:幻冬舎plus
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