いつか突然の忘却に飲み込まれたらー宇多田ヒカル『忘却』feat. KOHH|渋谷で君を待つ間に

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引用元:幻冬舎plus
いつか突然の忘却に飲み込まれたらー宇多田ヒカル『忘却』feat. KOHH|渋谷で君を待つ間に

カワムラユキ

誰かを待つ時間、あなたはどんな風に過ごすでしょうか。
その人が来たときの第一声を考えたり、そのあとの時間に思いを馳せたり、あるいはメールチェック、SNS、携帯ゲームなど、過ごし方はさまざま。
この連載では、そんな「待つ時間」にそっと寄り添う音楽を、DJ、作詞、音楽演出など幅広い活動をしているカワムラユキさんに毎回紹介していただきます。*   *   *

 

記憶の奴隷、生まれ持った歩幅で陳列されている夢

何も手にしていない幸せ、すべてを失う悦び 

 

表層的で享楽的な途切れ途切れの会話、真夜中の明治通りは眠ることはなく静かで

酩酊し続ける生活に囚われた勢いで、このまま捕まってしまおうか?

北参道から見る夕焼けは美しい、それは僅か20年前のこと

 

原宿警察はもうここにはない

セピア色に薄れた記憶と共に、ぼんやり地軸がずれている

 

絶望に導かれて、あらゆる電源をOFFにして、辿り着いた街、生温かい灰色の街

右にゆけば新宿の裏通り、左に歩けば原宿の表通り、迷子の空は霞んで

今はもう寄りつくこともない記憶の断片と、待ってはくれない現実と

冷たくなった自分の亡骸に手を合わせて

 

数々の狂気を笑い話に変えてきた、多くはない野望は泡のように消えた

君は僕を選んでくれたけれど、僕はいつの間にか汚れた手を振り払う

強風ではない、ふとした微風にそそのかされたのか

 

誰の話も聞こえなくなった

そう、僕にはもう時間がない

 

三匹の子豚には用はない

自分のためには生きられない、誰かのせいにもしたくない

楕円形の箱の中に押し込められて、窒息するのを待つ?

 

へし折られた反抗心、躁鬱激しい反抗期

それでも希望らしきものは、うっすらと掌に刻まれていたはず

 

強靭な生命の輝きに面食らって

飛ぶのを忘れた孫悟空、遊んでばかりの白雪姫

同情の余地はない、気まぐれな選択の成れの果て

 

圧倒的なディストピア、君は流行りの病に蝕まれて、次の言葉も見つからない

想いを綴ることは辛い、永遠に逃れられることはなく

 

いつか突然の忘却に飲み込まれたら

それは跡形もない、完璧な幸福なのかもしれない

 

 

宇多田ヒカル『忘却』feat. KOHH 2016年(Universal Music LLC)

■カワムラユキ
1978年8月東京生まれ、幼少期を仙台で過ごす。 98年頃よりフリーランスのプロデューサーとして、ヨーロッパのダンス・ミュージックのプロモート、様々な企業とのコラボレーションワーク、イベント制作を担当。 2000年頃よりDJ、ライターとしての活動をスタート。 DJ活動の傍らでスペインのIBIZA島などヨーロッパ各国を周遊しながら、ダンス・ミュージックに限らず、リラックスに特化した「Chill Out(チルアウト)」空間での音楽演出など、独自の活動を探求する。 2008年からは作詞家として「NARUTO」「バクマン。」「鷹の爪」などのアニメ主題歌、NHK WORLD「domobics」(東京パフォーマンスドール+どーもくん)、水曜日のカンパネラとのコラボ作品「金曜日の花魁」、多くのアーティストにカバーされたSam Smithのグラミー賞受賞曲「Stay With Me~そばにいてほしい」などの日本語詞を担当。 2010年には渋谷道玄坂にて、ウォームアップ・バー「しぶや花魁 shibuya OIRAN」をオープン。店舗運営と連動して、自身が主宰するミュージック・ブランド「OIRAN MUSIC」を2014年に発足。コンピレーションCDのリリース、リミックス・ワークの配信、アートや音楽フェスとのコラボなど、「渋谷」をキーワードとしたコンテンツ提供を活発に行っている。 現在、渋谷区のコミュニティFM「渋谷のラジオ」第一月曜16時~、インターネット・ラジオ「block.fm」毎週金曜20時~に、レギュラー番組の選曲とナビゲーターを担当中。 Twitter: @yukikawamura821 Instagram: @yukikawamura821 Web: OIRAN MUSIC公式サイト

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